企業には「法人番号」のほうが メリットが 大きい
企業にとって マイナンバー制度は「労多くして益少なし」「骨折り損のくたびれもうけ」なのだろうか。
マイナンバー制度では 個人に マイナンバーを 割り当てるだけでなく、企業などにも 固有の番号が 割り当てられる。
それは「法人番号」である。
法務省が 登記法人に割り当てた 12桁の「会社法人等番号」の 先頭に、検査用数字1桁を 付加した 計 13桁からなる 番号だ。
実は 企業によっては、マイナンバーよりも 法人番号の活用で得られる メリット の方が 大きくなる 可能性がある。
法人番号は、マイナンバーと同様に 10月から 文書による通知が 始まる。 通知の 送付先は 登記上の 所在地 である。
法人番号の 割り当ては 国税庁の所管であり、通知は 国税庁から 届く。
付番の 対象は、登記法人のほかに、政府機関、自治体、さらに 登記がなくても 法人税などの申告・納税義務がある 法人 など、300万超 に
上る。
登記法人、政府機関、自治体 は、法人番号の 下から 8桁めの 数字で 区別できるが、業種などによる 区分数字 は 含まれていない。
当然のことだが、法人番号は 個人情報保護法とは 無縁である。
マイナンバーの 利用が 法律で 厳しく制限され 違反者には 重い罰則が科される のに対して、法人番号は
税・社会保障の 行政事務に とどまらず、民間の企業も 個人も 誰でも 自由に 使うことができる。
国税庁は 基本 3情報( 名称または商号、本店または主たる事務所の所在地、法人番号 )を インターネット上の「法人番号公表サイト」で
公開し、検索・並び替え、一括ダウンロード、Web-API の 機能を 提供す る。
法人番号の 代表的な活用事例 は 4 パターン
政府機関が 法人番号の利活用事例 として 挙げている 代表例は 4つ ある。 (1)取引情報の集約、(2)新設事業者への営業の効率化、(3)新規取引先の実績・資格確認、(4)行政手続きの添付書類の削減 である。
(1)の 取引情報の集約 とは、企業内の複数の部署、または グループ各社で、異なる企業コード を 用いて 同一の取引先の情報 を 管理している 場合に、法人番号を 追加することで、取引先情報の 集約や 名寄せ作業 を 効率化できる というもの。 国税庁が 設置する 法人番号公表サイトから、名称・所在地の 最新情報を 入手して 更新することも 可能になる。
(2)の 新設事業者への 営業の効率化 も、法人番号公表サイトの 応用例である。
今年の10月以降に 設立登記される 法人については、「法人番号指定年月日」による 絞り込み検索が できるようになる。
現状では 新規の 営業先を 探すために 登記所や 信用調査会社の 情報を 入手する 手間や コストが かかっているが、効率的に
新規設立法人 を 見つけられるようになる。
これら(1)と(2)は、今年10月から 2016年1月まで の どこかの時点で 開設されるであろう 法人番号公表サイト を 使えば、すぐに 実現できる。
(3)の 新規取引先の 実績・資格 確認 は、2017年1月に 予定している「法人ポータル(仮称)」の 稼働 が 条件になる。
法人ポータルは、個人向けの「マイナポータル」の 法人版であり、個人向けと同様の
自社法人情報表示機能、プッシュ型サービス、ワンストップサービス に加えて、オープンデータの 法人情報表示機能の 実装を 計画している。
法人ポータルに集約する オープンデータ としては、資格許認可・行政処分/勧告・表彰実績・入札実績・補助金交付実績 など の 情報が
検討されている。
企業が 新規の 取引先に対して こうした情報の 提出を求めた 際に、新規取引先が 法人ポータルから 自社情報を電子署名付きで ダウンロードして
要求元の企業に 送信すれば、要求元の企業での 裏付け調査の 手間が 軽減される。
(4)の 行政手続きの添付書類の削減 は、政府内に、法務局の登記データベースや 税務署の納税データベースなどを
法人番号を基に参照できる 企業情報連携基盤 を 構築することが 前提となる。
政府機関同士で こうした情報を オンラインで 照会できるようになれば、企業は 補助金や 入札参加資格 の申請の際に
必要となる 登記事項証明書 や 納税証明書など の 添付書類 を 削減でき、手間や コストを 省けるようになる。
(3)と(4)の 実現には、国や自治体が持つ 企業情報への 法人番号の付与 や 関連手続きの 見直しも 欠かせない。
政府は 2014年6月 閣議決定した「世界最先端IT国家創造宣言改定版」で、公開可能な 企業情報への 法人番号の付与の 徹底 や
関連手続きの 見直し検討 を 盛り込んだが、情報公開時に 法人番号の併記を 義務付ける 時期は 2018年1月 としている。
企業が メリットを 実感できるようになるのは、まだ 2年以上 先に なりそうだ。
もっとも、上に挙げた 4パターンの 利活用事例 は、あくまで 国税庁や経済産業省といった 政府機関が 例示しているものに 過ぎない。 何らの制限なしに使える 法人番号には、官公庁には 思いもよらないような 効果的な 使い道が あるかもしれない。 現在、マイナンバー制度への 対応に 頭を悩ませている 企業は、その苦労が 報われるよう、手始めに 法人番号の ビジネス活用を 検討するのが 得策ではないだろうか。