改めて考えた「なぜ古民家なのか?」   2016.06.24 Fri

半分思い付きで書いているので、系統立った理路整然とした説明はできませんが、今日は「伝統」という観点から書いていこうと思います。

④日本の気候風土に 根ざしている
日本の建物というものは「竪穴住居・高床倉庫」→「掘っ立て造り」→「石場建ての古民家」というのが大まかな変遷です。
竪穴住居というと縄文時代のイメージが強いですが、室町時代くらいまでは現役の住居として使われ続けていました。
その竪穴住居に柱がついて、屋根が持ち上がったのが古民家です(特に寄棟屋根の場合)。
これが紛れもなく、日本の気候風土に合った建物なわけです。

一方、現在の新築住宅はというと、ごちゃ混ぜですね。
木造軸組み構造あり、2×4工法あり、ログハウスあり、鉄筋コンクリートあり。
外観だって和風、洋風に限らず、北欧風だの北米風だのカントリー調だの。
個人の自由と言ってはそれまでですが、みんな思い思いの家を建てるものだから、街並みにちっとも統一感がありません。
それらごちゃ混ぜの建物はいったいどうして生み出されるのか?
それは単なる商業主義による差別化です。
無用な差別化によって、選択肢が増えすぎているだけです。

僕自身も好き勝手に生きている現代人の一人ですので、あまり「伝統」というものを振りかざそうとは思いません。
ただ、人として逆らってはいけない、従わなければいけないものはあると思います。
それは自然であり、気候や風土です。
なぜ古民家がこのようなつくりをしているのか?
それは日本の気候風土に合っているからです。

そして、気候風土というのは我々の思考や世界観に大きな影響を与えています。
端的な例で言えば、厳しい自然の西アジア~ヨーロッパでは善悪二元論のキリスト教が生まれ、乾季と雨季を繰り返すインドでは輪廻転生の仏教が生ま れ、四季の恵みが豊かな日本では八百万の神の神道が生まれました。
僕たちはどこまで行っても結局は自然の一部であり、心にも体にも恐らくDNAにもその気候風土が染み付いています。
だからこそ自然を克服するなんてのは愚かなことなのです。

家の外と内を完全に遮断し、気密性を高め、その代償として電気の力で24時間換気をするなんてのは愚かなことです。
ならば呼吸する家を造り、土間と縁側を作って外と内の境界を曖昧にし、程々の不便さの中で暮らす方が理に適っています。
金属と木の剛性の違いを無視して、金物だらけの家を建てるのは愚かなことです。
自然に還らない材料ばかりを使って、すぐにゴミになってしまう(家の平均寿命は27年)のも愚かなことです。

⑤そもそも、現代では伝統工法の家はほとんど建てられない

前述の項目とも被りますが、そういえば現在の建築基準法では伝統工法の家を建てるのはすごく困難なはずです。
専門家じゃないし、今さら調べるのも面倒なので、4年位前に調べた記憶ですけれどもね。
石場建て、金物を使わない木組み、24時間換気などの部分ですごく難しいはずです。

それら法律的な面を乗り越えられたとしても、実際の設計事務所や施工者の確保。
そして金銭的な壁も立ちふさがります。
多分金銭的な部分だけ見ても、普通の稼ぎの人には難しいです。
自分でやろうにも、よくあるようなセルフビルド本では、もちろん伝統工法は想定されていません。
僕にだって出来ません。
古民家再生以外で伝統工法の家を手に入れるのは至難の技です。

⑥飽きない
先ほど触れたように、日本の住宅の平均寿命は27年程度です。
大部分は建物本体の寿命というよりは、間取り的な問題で取り壊しになるようです。
要するに「飽きちゃう」ということだと思います。

まず、間取りに関しては流行があります。
吹き抜けが流行ったり、オープンスペースが流行ったり、対面キッチンが流行ったり。
家作りには統一感が無いのに、こういう流行だけは乗っかるというのが興味深いところです。
で、この流行、やはり流行というだけあってすぐに時代遅れになります。
時代遅れになると飽きてしまったり、みすぼらしく思えたり。

親の世代で建てた家は、子どもの世代にはしっかり流行遅れとなり、しっかりと建て直されます。
だから27年という寿命はちょうど親子の世代交代とも合致するので、納得してしまいます。

古民家はそう言う意味では多分飽きないと思います。
商業主義による流行は、売るために短い周期で流行り廃りを繰り返しますが、古民家はそんなものを超越していますから。
古民家が建っているのは、商業主義によるせせこましい時間ではなく、悠久の時の流れの上です。

⑦完成時が最高では ない
新築って、多分完成した瞬間が一番綺麗で、最高の状態だと思います。
あとは劣化していくだけです。
特にクロス壁やウレタン塗装の床なんかは。
集成材やコンクリートも強度は落ちていく一方です。

対して、古民家はどんどんと味が出てきます。
黒光りする柱。
錆が出てくる土壁。
木だって、伐採してから100年後くらいが一番強度があります。

新しいものはどんどん劣化していくし、そして飽きます。
これはもう、どうしようもないことです。
現在の新築で、新建材の家で、どんどん味わいが増すなんてことはなかなかありません。

⑧間取りのよさ
今まで書いたいろんな項目と被りますが、古民家の間取りって素晴らしいです。
畳、襖、障子、土間、縁側。
どれをとっても緩やかで、そして汎用的な空間を作り出します。
夏は建具を開け払って開放的にし、一族のイベントには襖を開けて大広間をつくり、そして外と内とは緩やかに区切るというのが日本に合った家という ものです。

キーワードは汎用性です。

座敷は素晴らしいです。
座卓を置けばダイニングに、布団を敷けば寝室になります。
子ども部屋にだってなります。
応接間にも、来客用の部屋にもなれます。

何度も言いますが、子ども部屋なんて要りません。
今あるような普通の壁だらけの家で、子ども部屋なんて作っても、10年もすれば子どもは出て行ってしまって、その部屋はデッドスペースになりま す。
ならば座敷の一部を子どもに使わせた方が理に適っています。

あと、無駄さも好きです。
20畳の土間なんて無駄です。

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我が家自慢の20畳の土間。

なんにでも使えますが、今のところは何にも使っていません。
物もほとんど置いていません。
使わない、置かないというのがかえって最高の贅沢です。
もちろん今後使うことも出てくるでしょうが、なるべくごちゃごちゃと物は置きたくないものです。

例えばこの20畳の土間。
新築だと難しいでしょうね。
「玄関に20畳の土間を作りたい。使い道は特に無い」
なんて要望したら、設計士さんが全力で止めると思います(笑)
古民家だから許される無駄であり、贅沢だと思います。

なんて、本当にとりとめもなく書いてしまいました。

これら一つ一つは新築でもクリアできる条件もありますが、必ず予算の壁にぶつかります。
20畳の土間を作るのも、土壁にするのも、石場建てにするのも。

現在の建築業界というのは、少しでも標準仕様から外れたことをすると金額が跳ね上がるものなのです。
だから、僕の欲しい要素を詰め込むと、これはもう完全に予算オーバーします。
だから、冷静に考えようが、情熱をこめようが、僕にとっては古民家再生しか無かったのです。


僕が新築を選ばなかった25の理由  2016.06.24 Fri

前回前々回と僕が古民家を選んだ理由を書き連ねてみました。
思いつきでとりとめもなく書いてしまい、しかも随所が新築住宅の悪口になってしまったので、書きながら少し嫌な気分になったり。

で、結局まとめてみると、僕は古民家を選んだというか、新築を好まなかったということに気付きました。
新築には僕の欲しいものはなかった、適えられなかったということです。

今回は本当に新築住宅の悪いところを書きます。
いつまでもそんなことを書いていたくないので、これっきりにします。
気分を害す方がいたら謝ります。

必要以上に私情を挟みたくないので、簡潔に、箇条書きにします。

①新築住宅は小洒落てはいるけれど、外壁はサイディング、内壁は石膏ボード下地のビニールクロスか、1~2ミリ程度のごく薄い塗り壁で、実質張り ぼてのようなものであること。

②土壁でないので、家自体が呼吸せず、なおかつ新建材やボンドから出る化学物質を排出するために24時間換気(建築基準法で義務化)が必要である こと。

③建築基準法のせいで、木材とは剛性が異なる金物の使用が義務付けられていること。

④基礎と建物が緊結されており、地震の揺れを建物に伝えてしまうこと。

⑤ローコスト化のせいで、片流れの屋根が多いこと。

⑥家の寿命を決める重要な要素であるはずの軒が、「部屋を明るくする」という理由で極端に短くなっていること。

⑦伝統家屋の「障子襖による緩やかな区切り」ではなく、壁によって間取りがきっちりと区切られてしまっていること。
これは個人主義的な西洋風の発想によるもので、「共同」を旨としてきた日本社会にはそぐわない。

⑧床にクッションフロア・プリント合板・ウレタン塗装が多いこと。

⑨集成材が多用されていること。
集成材にもいいところはあるのだろうけれども、例えば化粧梁が集成材とか、僕には我慢できない。

⑩プレカットが主流で、木の癖もろくに読まれていないこと。
そして、「プレカット=コストカット」だけれども、そのせいで木の性質を理解しながら刻むという大工仕事がなくなり、大工が実質「組立工」に成り 下がっている。
ちゃんとした大工さんがどんどん減っています。

⑪間取りなどに流行があって、そのせいで建物としての寿命が極端に短くなっていること(平均で27年)。

⑫寿命が短い上に、新建材だらけの新築住宅は土に還らず、ゴミになってしまうこと。

⑬完成時が最高の状態で、それからは劣化する一方。
価値も下がる一方。
時間が経つほどに味わいが増す(付加価値がつく)ような新築はほとんどありえないこと。

⑭明るすぎること。

⑮無垢材にこだわった家の場合は、今度はわざとらしすぎること。
特に天井や壁の羽目板などはコストの都合上、2級品くらいの杉を使うことが多い。
すると赤身と白太のコントラストが強すぎたり、節だらけだったりする。
天井や壁が節だらけというのは、落ちつかないです。

⑯間取り上、座敷が極端に少ないこと。

⑰土間、縁側がないこと。
家の外と内を区切る、緩衝スペースは必要です。

⑱中性化によるコンクリートの寿命があること。
コンクリートの寿命は木よりもはるかに短いはず。

⑲限られた予算とスペースなので、間取りに無駄(遊び)が無さ過ぎること。
その癖、壁が多く、間取りに流動性が無いので、例えば子どもが独立した後の子ども部屋がデッドペースになるなど、今度は悪い意味での無駄が増えて いくこと。

⑳高気密高断熱はぬるま湯のようなもので、人間を甘やかしてしまうこと。
特に、子どもが丈夫な肉体と精神を育むためには、暑さ寒さというのは必要だと思います。

21便利すぎること。
不便は人を育てます。

22個室ばかりの間取りは家族を分断してしまうこと
。最近はこの反動か、オープンスペースの家も多いです。
わざとらしいオープンスペースも苦手です。
緩やかに区切って、いつでも繋げられる襖でいいと思います。

23価値がすぐになるなること。
新築直後に既に2~3割減です。
20~30年で価値はほぼ0です。
場合によっては、不動産売買の際に「取り壊し費用」とかなって、負債になりかねません。
100年住宅とか言っていますが、本気でしょうか。
構造体の寿命が100年もったとしても、
その家は100年後にはどのような扱いを受けているでしょうか。
現在における「古民家」のような扱いを受けるとは思えません。
(今の古民家だって、随分と割を食っていますが・・・)

24新築住宅は商業主義の産物であり、お金ありきで幸せが置き去りにされていること。
この場合の幸せとは、「家」「業者」「施主」三者の幸せ。
例えば、
業者の儲けや、施主のコストカットのせいで家が不幸になってもいけない。
元請の儲けや、施主のコストカットのせいで下請け施工者が安く買い叩かれてもいけない。
施主が業者に騙されてもいけない。
業者が施主の不当なクレームに苦しめられてもいけない。
ということです。

25こだわるとお金ばかりかかること。
ここまで書いたことは全ての新築に当てはまるわけではありません。
いくつかのモデルハウスに行ったり、折込チラシを眺めたりしての感想です。
例えば新築だって、土壁に出来ますし、躯体だって手刻みにも出来ます。
ここまで書いてきた一つ一つの問題点をクリアするだけなら、法律さえ引っ掛からなければクリアは出来ます。
ただ、物凄くお金がかかります。
そして、ハウスメーカーや工務店にとっても、標準仕様と大きくずれるために、出来ればやりたくないでしょう。
標準仕様の家を量産するのが、商業主義的には効率がいいからです。
日本の気候風土に根ざした伝統的な家は、いつのまにか大金を出さなければ建てられなくなりました。

以上が僕が新築を選ばなかった理由です。
そして、元々古い家が好きだったこともあって、自然と古民家再生を始めました。

今考えても、新築住宅に住んでいる自分は想像できないな、うん。
きっと退屈すぎて死んじゃうかも(笑)