半分思い付きで書いているので、系統立った理路整然とした説明はできませんが、今日は「伝統」という観点から書いていこうと思います。
④日本の気候風土に
根ざしている
日本の建物というものは「竪穴住居・高床倉庫」→「掘っ立て造り」→「石場建ての古民家」というのが大まかな変遷です。
竪穴住居というと縄文時代のイメージが強いですが、室町時代くらいまでは現役の住居として使われ続けていました。
その竪穴住居に柱がついて、屋根が持ち上がったのが古民家です(特に寄棟屋根の場合)。
これが紛れもなく、日本の気候風土に合った建物なわけです。
一方、現在の新築住宅はというと、ごちゃ混ぜですね。
木造軸組み構造あり、2×4工法あり、ログハウスあり、鉄筋コンクリートあり。
外観だって和風、洋風に限らず、北欧風だの北米風だのカントリー調だの。
個人の自由と言ってはそれまでですが、みんな思い思いの家を建てるものだから、街並みにちっとも統一感がありません。
それらごちゃ混ぜの建物はいったいどうして生み出されるのか?
それは単なる商業主義による差別化です。
無用な差別化によって、選択肢が増えすぎているだけです。
僕自身も好き勝手に生きている現代人の一人ですので、あまり「伝統」というものを振りかざそうとは思いません。
ただ、人として逆らってはいけない、従わなければいけないものはあると思います。
それは自然であり、気候や風土です。
なぜ古民家がこのようなつくりをしているのか?
それは日本の気候風土に合っているからです。
そして、気候風土というのは我々の思考や世界観に大きな影響を与えています。
端的な例で言えば、厳しい自然の西アジア~ヨーロッパでは善悪二元論のキリスト教が生まれ、乾季と雨季を繰り返すインドでは輪廻転生の仏教が生ま
れ、四季の恵みが豊かな日本では八百万の神の神道が生まれました。
僕たちはどこまで行っても結局は自然の一部であり、心にも体にも恐らくDNAにもその気候風土が染み付いています。
だからこそ自然を克服するなんてのは愚かなことなのです。
家の外と内を完全に遮断し、気密性を高め、その代償として電気の力で24時間換気をするなんてのは愚かなことです。
ならば呼吸する家を造り、土間と縁側を作って外と内の境界を曖昧にし、程々の不便さの中で暮らす方が理に適っています。
金属と木の剛性の違いを無視して、金物だらけの家を建てるのは愚かなことです。
自然に還らない材料ばかりを使って、すぐにゴミになってしまう(家の平均寿命は27年)のも愚かなことです。
⑤そもそも、現代では伝統工法の家はほとんど建てられない
前述の項目とも被りますが、そういえば現在の建築基準法では伝統工法の家を建てるのはすごく困難なはずです。
専門家じゃないし、今さら調べるのも面倒なので、4年位前に調べた記憶ですけれどもね。
石場建て、金物を使わない木組み、24時間換気などの部分ですごく難しいはずです。
それら法律的な面を乗り越えられたとしても、実際の設計事務所や施工者の確保。
そして金銭的な壁も立ちふさがります。
多分金銭的な部分だけ見ても、普通の稼ぎの人には難しいです。
自分でやろうにも、よくあるようなセルフビルド本では、もちろん伝統工法は想定されていません。
僕にだって出来ません。
古民家再生以外で伝統工法の家を手に入れるのは至難の技です。
⑥飽きない
先ほど触れたように、日本の住宅の平均寿命は27年程度です。
大部分は建物本体の寿命というよりは、間取り的な問題で取り壊しになるようです。
要するに「飽きちゃう」ということだと思います。
まず、間取りに関しては流行があります。
吹き抜けが流行ったり、オープンスペースが流行ったり、対面キッチンが流行ったり。
家作りには統一感が無いのに、こういう流行だけは乗っかるというのが興味深いところです。
で、この流行、やはり流行というだけあってすぐに時代遅れになります。
時代遅れになると飽きてしまったり、みすぼらしく思えたり。
親の世代で建てた家は、子どもの世代にはしっかり流行遅れとなり、しっかりと建て直されます。
だから27年という寿命はちょうど親子の世代交代とも合致するので、納得してしまいます。
古民家はそう言う意味では多分飽きないと思います。
商業主義による流行は、売るために短い周期で流行り廃りを繰り返しますが、古民家はそんなものを超越していますから。
古民家が建っているのは、商業主義によるせせこましい時間ではなく、悠久の時の流れの上です。
⑦完成時が最高では
ない
新築って、多分完成した瞬間が一番綺麗で、最高の状態だと思います。
あとは劣化していくだけです。
特にクロス壁やウレタン塗装の床なんかは。
集成材やコンクリートも強度は落ちていく一方です。
対して、古民家はどんどんと味が出てきます。
黒光りする柱。
錆が出てくる土壁。
木だって、伐採してから100年後くらいが一番強度があります。
新しいものはどんどん劣化していくし、そして飽きます。
これはもう、どうしようもないことです。
現在の新築で、新建材の家で、どんどん味わいが増すなんてことはなかなかありません。
⑧間取りのよさ
今まで書いたいろんな項目と被りますが、古民家の間取りって素晴らしいです。
畳、襖、障子、土間、縁側。
どれをとっても緩やかで、そして汎用的な空間を作り出します。
夏は建具を開け払って開放的にし、一族のイベントには襖を開けて大広間をつくり、そして外と内とは緩やかに区切るというのが日本に合った家という
ものです。
キーワードは汎用性です。
座敷は素晴らしいです。
座卓を置けばダイニングに、布団を敷けば寝室になります。
子ども部屋にだってなります。
応接間にも、来客用の部屋にもなれます。
何度も言いますが、子ども部屋なんて要りません。
今あるような普通の壁だらけの家で、子ども部屋なんて作っても、10年もすれば子どもは出て行ってしまって、その部屋はデッドスペースになりま
す。
ならば座敷の一部を子どもに使わせた方が理に適っています。
あと、無駄さも好きです。
20畳の土間なんて無駄です。
我が家自慢の20畳の土間。
なんにでも使えますが、今のところは何にも使っていません。
物もほとんど置いていません。
使わない、置かないというのがかえって最高の贅沢です。
もちろん今後使うことも出てくるでしょうが、なるべくごちゃごちゃと物は置きたくないものです。
例えばこの20畳の土間。
新築だと難しいでしょうね。
「玄関に20畳の土間を作りたい。使い道は特に無い」
なんて要望したら、設計士さんが全力で止めると思います(笑)
古民家だから許される無駄であり、贅沢だと思います。
なんて、本当にとりとめもなく書いてしまいました。
これら一つ一つは新築でもクリアできる条件もありますが、必ず予算の壁にぶつかります。
20畳の土間を作るのも、土壁にするのも、石場建てにするのも。
現在の建築業界というのは、少しでも標準仕様から外れたことをすると金額が跳ね上がるものなのです。
だから、僕の欲しい要素を詰め込むと、これはもう完全に予算オーバーします。
だから、冷静に考えようが、情熱をこめようが、僕にとっては古民家再生しか無かったのです。